宅建業法とは、不動産取引において、不動産会社の免許のことや宅地建物取引士の資格や取引内容について定められた法律です。保証協会、媒介契約、37条書面、35条書面、監督処分・罰則などが頻出されています。
1 | 宅建業 >①宅地建物取引業とは >②取引とは >③業とは >免許を受けずに宅建業を営むことができる者 |
2 | 免許 >①宅建業の免許 >②免許の種類 >③建業法上の事務所とは >④免許要件 >⑤無免許営業の禁止 >⑥宅建業者名簿 >⑦免許換え >⑧廃業の届出 |
3 | 宅地建物取引士 >宅建士登録 >変更の登録 >登録の移転 >専任の取引士の設置義務のある場所と人数 >宅建士の補充 |
4 | 営業保証金 >①営業保証金の供託 >②営業保証金の額 |
5 | 保証協会・弁済業務保証金 >①保証協会の社員 >②弁済保証金分担金 >③弁済保証金分担金の納付 |
6 | 媒介契約 >①媒介契約の種類 >②業務処理状況の報告義務 >③指定流通機構への登録 >④媒介契約書の書面化 |
7 | 広告規制 >過大広告、おとり広の禁止 |
8 | 説明義務 >①35条重要事事項説明書 >②契約内容に関する事項 >③物件に関する事項 |
9 | 契約に関する規制 >①契約時期 >②信用供与の禁止 >③37書面の記載事項 |
10 | 業務上の規制 >①従業者証明制度・従業者名簿 >②帳簿の備え付け >③標識の掲示 |
11 | 自ら売り主制限 >8種制限 |
12 | 報酬に関する制限 >売買の媒介・代理の報酬計算 |
13 | 監督・罰則 |
14 | 住宅瑕疵担保履行法 >①瑕疵担保責任 >②損害賠償額の予定 >③手付保全措置 |
1)宅建業・宅建業者
①宅地建物取引業とは、「宅地」や「建物」の「取引」を「業」として行うことです。
重要:宅地の意味
※現在、建物が建っている土地。用途地域の土地(道路、公園、河川、広場、水路の土地は除く)。
②取引とは、自ら当事者として売買、交換を行う。他人間の契約を代理(媒介)して売買、交換、貸借を行う。
③業とは、不特定多数の者を相手として、反復継続して行うことを言います。
④重要:免許を受けずに宅建業を営むことができる者
1)国・地方公共団体
2)信託会社・信託業務を兼営する金融機関
2)免許
①宅建業の免許は「都道府県知事」または「国土交通大臣」から受けます。
どちらの免許を受けるかは、「事務所の場所」で決まります。
②免許の種類
1)一つの都道府県内でのみ事務所を設ける場合は、その都道府県知事の免許
2)2つ以上の都道府県内で事務所を設ける場合は国土交通大臣の免許
③建業法上の事務所とは、
本店(主たる事務所)
支店(従たる事務所)
※本店は常に事務所として扱われます。
④免許要件
重要:成年後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者は、免許を受けることができません。
免許取り消し処分を受け、その取消の日から5年を経過しない者は、免許を受けることができません。また、犯罪の種類を問わず禁固刑以上の刑に処せられた者は5年を経過しない者は免許を受けられません。免許の有効期間は5年です。有効期間満了の日の90日から30日前までに、免許の更新の申請をする必要があります。
⑤無免許営業の禁止
・免許を受けずに宅建業を行うと、無免許営業になります。また、宅建業者が名義を他人に貸して、宅建業を行わせたりすることは、名義貸しになり、禁止されています。
⑥宅建業者名簿
1)免許証番号および免許年月日
2)商号または名称
3)法人業者の場合、その役員および政令で定める使用人の氏名
4)事務所の名所および所在地
5)事務所ごとに置かれる専任の宅地建物取引士の氏名
6)指示あmたは業務停止処分があったときは、その年月日及び内容
7)宅建業以外の兼業の種類
⑦免許換え
・例えばA県内にのみ事務所を有し、B県知事の免許を受けている甲が、C県にも事務所を設置した場合、甲はA県とC県に事務所を有することになり、国土交通大臣の免許を受ける必要があります。
免許を受けている甲が別の免許を受ける場合、免許換えといいます。
※免許換えによる免許に有効期間は新免許交付の日から5年になります。
⑧廃業の届出
・法人である宅建業者が合併により消滅した場合は、消滅した法人の代表役員であった者。
・宅建業者が破産手続開始の決定を受けた場合は、破産管財人。
・法人である宅建業業者が合併・破産以外の理由で解散した場合は、清算人が。
・宅建業者が廃業した場合は、宅建業者であった個人または法人の代表者がその日から(死亡の場合は、相続人が死亡の事実を知った日から)30日以内に、免許権者に届なければならない。
・宅地建物取引士証は、登録をしている都道府県知事から交付を受けます。
・取引士証の有効期間は5年になります。
重要
・取引士の交付を受けようとする者は、原則として、登録している都道府県知事が指定する法定講習で、交付申請前6ケ月以内に行われるものを受講しなければなりません。
注意):例外
①試験に合格をした日から1年以内に取引士証の交付を受けようとする者
②登録の移転にともない取引士証の交付を受けようとするもの。
・取引士証の有効期間の更新を受けようとする者は、登録をしている都道府県知事が指定する講習で、交付申請の6ケ月以内に行われるものを受講しなければならない。
・取引士は、その氏名または住所を変更したときは、遅滞なく、変更の登録の申請をするとともに、取引士の書換え交付の申請をしなければならない。
・登録の移転の申請とともに新たな取引士証の交付申請をする場合、法定講習を受講する必要はない。
この場合、新たな取引士証の有効期間は、前の取引士の有効期間の残りの期間になる。
【専任の取引士の設置義務のある場所と人数】
①事務所:業務に従事する者5人に1人以上
②事務所以外の案内所:1人以上
・宅建士の補充
※既存の事務所で専任の取引士の必要人数が満たない場合、2週間以内に必要な措置を取らなければならない。
4)営業保証金制度
①営業保証金の供託
※営業保証金制度は、営業上のトラブルや事故があった時のためにお金を預けておく制度です。
これを営業保証金制度の供託といいます。
宅建業者と取引をしたお客様が、トラブルや事故からお金で解決する仕組みで、営業保証金から支払いを受けます。これを営業保証金の還付といいます。
宅建業者が廃業したり、免許の取消を受けた場合に営業保証金を供託しておく必要がなくなりますので、宅建業者は供託所から営業保証金を返してもらう必要があります。これを営業保証金の取り戻しといいます。
【重要】
②営業保証金の額:主たる事務所につき1000万円、その他の事務所につき1か所ごとに500万円の合計になります。
※営業保証金は、金銭で供できるほかに、国債等の有価証券によっても供託することができます。
①国際証券は額面金額の100%
②地方債証券・政府保証債証券は額面の90%、その他の債権は80%に評価されます。
・営業保証金の供託場所は、主たる事務所の最寄りの供託所です。
・宅建業者は、営業保証金を供託し、その旨を届出をした後でなければ、その事務所で事業を開始してはならない。
①保証協会の社員
保証協会は、宅建業者のみを社員とする団体です。宅建業者は保証協会の社員になります。
※宅建業者は複数の保証協会の社員になることはできません。
②弁済保証金分担金
・保証協会に加入しようとする宅建業者は、その加入しようとする日までに、弁済保証金分担金を保証協会に納付しなければなりません。主たる事務所につき60万円、その他の事務所1ケ所ごとに30万円の合計です。
③弁済保証金分担金の納付
※新たに事務所を設置したときは、その日から2週間以内にその事務所の弁済業務保証金分担金を保証協会に納付しなければなりません。もし、納付を怠った場合は社員の地位を失うことになります。
※保証金の還付手続き:弁済業務保証金から還付を受けようとする者は、保証協会の認証を受ける必要があります。
・媒介契約の種類は2つに分かれます。依頼者が他の宅建業者にすることができるかどうかで、2つに分かれます。
①媒介契約の種類
1)一般媒介(他に依頼ができる)
2)専任専属媒介(自己発見取引の禁止):有効期間は3ケ月です。(自動更新はできません)
②業務処理状況の報告義務
1)専任媒介契約の場合、2週間に1回以上の割合で業務の処理状況を報告しなければならない。
2)専任専属の場合、依頼者に1週間に1回以上の割合で業務の処理状況を報告しなければならない。
③指定流通機構への登録
1)専任媒介契約と締結した時は、契約締結日から7日以内に(休業日は除く)にその物件を指定流通機構に登録しなければならない。
2)専属専任媒介契約締結した時は、契約締結日から5日以内に(休業日は除く)にその物件を指定流通機構に登録しなければならない。
☆指定流通機構は、宅地建物取引業法に基づき国土交通大臣が指定した不動産流通機構で、通称「レインズ」と呼ばれています。 それぞれの法人が担当する地域の不動産情報の交換業務等を行っています。
④媒介契約書の書面化
・宅建業者は、宅地建物の媒介契約を締結した時は、遅滞なく、媒介契約の内容を記載した書面(媒介契約書面)を作成し、記名押印したうえで、依頼者に交付しなければならない。
7)広告に関する規制
:過大広告、おとり広の禁止
8)説明義務
【説明の義務】
①★35条重要事項説明書
※説明不要:①代金・交換差金・借賃の額・支払時期・支払方法
②契約内容に関する事項
1.代金、交換差金、及び借賃以外の金銭の額と目的
2.契約解除に関する事項
3.損害賠償の予定、違約金
4.手付金等の保全措置(業者が自ら売主の場合)
5.支払金・預り金の保全措置
6.金銭貸借の斡旋
7.瑕疵担保責任の履行措置の内容
8.購入者等の保護の必要性、及び契約内容の別を勘案して命令で定められた事項
9.割賦販売に関する事項
③物件に関する事項
・登記・引渡しの時期
9)契約に関する規制
①契約時期
※宅建業者は、宅地造成・建物建築に関する工事の完了前においては、当該工事に必要とされる開発許可・建築確認等の処分があった後でなければ、工事に係る宅地建物につき、自ら当事者として、または当事者を代理して売買・交換契約を締結したり、売買、交換契約の媒介をしてはならない。
②信用供与の禁止
※宅建業者は、業務上、相手方に対して手付を貸付その他の信用を供与して、契約の締結を誘引してはならない。
※宅建業者は、売買・交換・賃貸借契約の成立後、地帯なく契約の当事者に契約内容を記載した書面(37条書面)を交付しなければならない。
③37書面の記載事項
①当事者の氏名・住所
②物権を特定するために必要な表示
③代金・交換差金・借賃の額およびその支払い時期・方法
④物件の引渡し時期
⑤移転登記の申請時期(貸借は除く)
10)業務上の規制
①従業者証明制度・従業者名簿
1)宅建業者は、事務所ごとに従業者名簿を備え、従業者の氏名、住所、従業者証明番号、取引士であるかどうか否かの別を記載しなければならない。
2)宅建業者は、取引の関係者から請求があったときはこの従業者名簿を閲覧させなければならない。
3)宅建業者は、従業者名簿を最終の記載をした日から10年間保存をしなければならない。
②帳簿の備え付け
1)宅建業者は、事務所ごとに業務に関する帳簿(取引台帳)を備え、宅建業に関し取引のあったつど、その年月日、取引物件の所在・面積などの事項を記載しなければならない。
2)帳簿は、各事業年度の末日に閉鎖し、その後5年間(当該宅建業者が自ら売り主になる新築住宅に係るものは10年間)保存しなければならない。
③標識の掲示
・標識の掲示義務がある場所
・事務所
・営業所・出張所(継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で事務所以外の場所)
・一団(10区画以上または10戸以上)の宅地建物の分譲を行う場合の案内所
・他の宅建業者が行う一団の宅地建物の分譲を代理・媒介する場合に設置する案内所。
・業務に関し、展示会その他これに類する催しを実施する場所
・一団の宅地建物を分譲する場合における当該宅地建物の所在する場所。
・案内所の届出
・宅建業者は、事務所以外の専任の宅地建物取引士を設置する義務がある場所について、一定事項を業務開始の10日前までに、免許権者およびその業務を行う場所の所在地を管轄する都道府県知事に届け出なければならない。
11)自ら売主制限
・8種制限
①クーリングオフ制度
・クーリングオフとは、一定の契約に限り、一定期間、説明不要の無条件で申し込みの撤回または契約を解除できる法制度です。
※クーリングオフできない場所
・宅建業者の事務所
・専任の宅地建物取引士を設置すべき場所(営業所、出張所、宅建業者が設置する10区画以上、一団の宅地10戸以上の案内所)
・宅建業者の相手方の自宅・勤務する場所
・宅建業者が申し込み等を行うことができる旨およびその方法を書面で告知した日から起算して8日間を経過したとき
・買主が宅地建物の引渡しを受け、かつ、代金の全額を支払ったとき
・クーリングオフは、書面で行わなければならず、その書面を発した時に、効果が生じる。
②自己の所有に属しない宅地建物の売買契約制限
③瑕疵担保責任の特約の制限
④損害賠償額の予定等の制限
⑤手付額の制限等
⑥手付金等の保全措置
⑦割賦販売契約の解除等の制限
⑧所有権留保の禁止
12)報酬に関する規制
・売買の媒介・代理の報酬計算
①代金額が200万円以下の場合、代金額×5%
②代金額が200万円超400万円以下の場合、代金額×4%+2万円
③代金額が400万円超の場合、代金額×3%+6万円
13)監督・罰則
14)住宅瑕疵担保履行法
①瑕疵担保責任
・宅建業者が自ら売り主となる売買契約において、原則として民法で認められた瑕疵担保責任の規定により買主には不利な特約をしてはならない。ただし、瑕疵担保責任を負う期間を引渡しの日から2年以上とする特約は認められる。
②★損害賠償額の予定
・宅建業者が自ら売り主となる宅地建物の売買契約において、当事者の債務不履行を理由とする契約解除にともなう損害賠償を予定し、または違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の10分の2を超える予定をすることはできない。これに違反して、10分の2を超える定めをしたときは、超える部分について無効になる。
・宅建業者が自ら売り主となる宅地建物の売買契約の締結に際して手付を受領したときは、解約手付となる。代金額の10分の2以上を超える額の手付を受領することはできない。
・宅建業者は、自ら売り主となる宅地建物の売買契約においては、原則として、保全措置を講じた後でなければ、買主から手付を受領してはならない。
・手付金等の保全措置が不要な場合
①工事完了前の未完成物件の場合は、代金の5%以下、かつ、1000万円以下であるとき。
②工事完了後の完成物件の場合は、代金の額の10%以下、かつ、1000万円以下であるとき。
③買主に所有権移転登記がされたとき、または買主が所有権を登記したとき。
※1件の取引における報酬の合計限度額は基本式の2倍まで。